2/27/2023
★特集第2回目パート1: 新しい法人の銀行口座開設は難しくなっている!?
1. よく起きている口座開設時の問題は!?
こんにちは。ナビゲーターふみえです。
最近、「シンガポールでは新規法人の口座開設が難しくなっているんですか?」「シンガポール3大銀行から取引調査書が会社に届きました。どのように回答したらよいのでしょうか?」という問い合わせが増えています。この状況に驚かれている方も多いのですが、これは今に始まったことではない、というのが現場で常に新設法人の口座開設をしている私たちの印象です。
◆審査が厳しくなっている原因は?
皆さんも一度はお聞きになられたことのあるパナマ文書(報道があったのは2016年4月ですね)から始まった、外国の金融機関を利用した、国境を超える脱税を予防するための租税条約等で管理する共通報告基準(通称CRS: Common Reporting Standard)に従い、各国が順次「非居住者」に係る金融口座情報を自動的に交換する制度が開始されました。
日本では2017年1月1日から開始、シンガポールでも2018年から情報交換を本格的に開始しています。
ここでのポイントは「非居住者」のという点です。最初に申し上げた銀行口座開設が難しくなっている対象は「非居住者」が株主となっている新設シンガポール法人が中心なのです。現在、シンガポール国内3大銀行(DBS、OCBC、UOB)で、「非居住者」が株主となっている新設シンガポール法人の銀行口座開設が難しくなっているのは事実です。
非居住者は、納税という観点からはシンガポール国外での納税義務があるのですが、シンガポール銀行だけでは納税額の把握が難しいため、銀行の取引開始(口座開設)時にKYC(Know Your Customer)を行い、「そのシンガポール法人に税務上の事業実態はあるのか?」を確認します。この際の質問内容の具体例として、以下をリクエストされるケースがあります。
・シンガポール国内企業との契約書や請求書
・事業を行うオフィスの賃貸契約書
・スタッフとの雇用契約(及びスタッフの年金支給履歴等)
口座開設を申し込む側としては、「新設したばかりで、まだ銀行口座を開設していないのに、なぜお客様に対して請求書を発行できるのか?」「給与支払いのための法人口座がないのに、なぜ雇用契約ができるのか?」と鶏が先か卵が先かのような質問に当惑される方も多いと思います。しかし、これがシンガポール3大銀行の対応の多くを占めていることも事実です。そのため、大手銀行での「非居住者」が株主を務める新規法人口座開設は、銀行にとってのコンプライアンスコストが増え、経営上好ましくないため、過去に比べ、引き気味のスタンスであることは間違いないと言えます。
◆また、銀行担当者の質の低下も「厳しく感じる」原因の一つと実感しています。通常、口座開設時にはシンガポールで行う事業の説明をするのですが、その事業内容の理解力が、特にシンガポール3大銀行の担当者において、かなり落ちていると言えるでしょう。弊社で付き合いの長いUOBの支店長でさえも、為替取引の営業はするが口座開設はちょっと、、、という姿勢なので、優秀な人材は為替営業(これはまだ銀行にとってドル箱のようですね)や融資営業に配置されるのでしょう。
外資系シンガポール法人の口座開設はどうすればよいのか?
詳しい解決方法はパート2・パート3でご説明しますが、最近では法人設立時にシンガポール居住者を株主に設定し口座開設をし、その後株式譲渡(非居住者や日本の親会社に対して)をする手段が流行っていますね。
手続きが圧倒的に早く終わるため、有効な手段の一つと言えますが、銀行側も株主変更や役員変更登記情報を常にモニターしているため、銀行側のKYCがその後発生します。運よく銀行から質問がなかった、というラッキーな方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでもこの手段はその後銀行から新規口座開設と同様の質問を受け、そこで十分な回答ができない時は口座が閉鎖されるリスクを持つ、と十分理解してから進めるとよいでしょう。
パート2では、現在シンガポール国内で「法人口座」サービスを行っている銀行を網羅的にみていきたいと思います。