Vol.068 — 【実録】AIネイティブ 日本版(DAY4・最終回)研修最終日、話題は「二人目」のAIスタッフに。
掲載日: 2026-08-29 | ニュースレター
概要
Vol.068は、「AIネイティブ 日本版」の第4回(DAY4・最終回)である。ある化粧品メーカーの社長とスタッフのお二人と進めてきた全4回の研修も、今日が最終日。DAY1は自社サイトの文字修正が約2分で終わって言葉を失った日、DAY2はお一人が自分で初めてのサイトを作り上げていて西田のほうが驚かされた日、DAY3は新しい機能ではなく「AIの育て方」を伝えた日だった。最終日は、受講者全員が同じ部屋で実施された。西田はこの効果を率直に書く。設定の作業は、最後の一歩でつまずくものだ。権限の確認、共有の設定、動作の確認——画面越しだと「では後ほどこちらで」と宿題が残るが、同じ部屋にいればその場で最後まで対応できる。おかげで必要な設定はすべて完了した。やり遂げたかったことは、はっきりしていた。お二人のフォルダをつなぐこと。それぞれが別々に動かしていたAIウェブ担当者を、Googleドライブを通じて、お二人でひとりを共有する形にする。これで初めて、AIウェブ担当者は「チームメンバー」として働ける。手間取ったのは共有そのものより、中身の同期だった。AIウェブ担当者には指示書と記憶のファイルと状況のファイルがあり、これまではお二人がそれぞれ自分の分を持っていた。そのままつないでも二つのコピーが並ぶだけで、日が経つほど中身はずれ、どちらが本物か分からなくなる。そこで、お二人が同じ一組を見に行く形に組み直した。指示書も書き直した。書き加えたのは二つ——「あなたはお二人に共有されています」、そして「今どちらと話しているのかを、常に把握してください」。人間の秘書なら誰にも教わらずにやることだが、AIには言葉にして渡さなければ分からない。ここを曖昧にしたまま共有すると、片方に伝えた話がもう片方の仕事に混ざり込む。共有フォルダを作った、という言い方より、共有する同僚をひとり置いた、と言うほうが近い。DAY2で「書類はメールで送り合っています」と伺った、あの質問の着地点である。そしてこの日いちばん嬉しい質問が出た。「AIに事業計画の下書きを頼めることは分かりました。それも、このAIウェブ担当者にお願いしていいのでしょうか?」。もちろんできます、ただし別のプロジェクトとして、別のフォルダで——つまり、二人目のAIスタッフを採用する、ということだ。理由は記憶のファイルにある。役割ごとに記憶をきれいに分けておいたほうがいい。ウェブ担当として積み上げた会話と、財務担当として積み上げた会話は、効いてくる場面がまったく違う。分けておけばそれぞれの記憶がそれぞれの役割の中で濃くなり、混ぜれば一人の中で判断が衝突する。とくに財務の役割は他と噛み合わないことが多い。人間の会社でも、デザインの担当と経理の担当を一人にまとめたら、その人の中で毎日けんかが起きる。この質問が嬉しかったのは、お客様がもう「AIを使う」ではなく「AIスタッフを増やす」という考え方に立っていたからだ。話は自然に、AIとのやり取りそのものをどう良くするかへ進む。生成AIの言語コミュニケーションは猛烈な速さで良くなっており、これから伸びしろが大きいのは私たちの側である。難しいのはデザインだ。「これは好き、これは違う」を理由まで含めて文章にするのは、相手が人間でも難しい。声も表情も共有している人間同士でさえそうなのだから、文字だけのAIならなおさらである。だから言葉以外の伝え方をこちらが用意する必要がある。西田はこれを「視覚的なすり合わせ」(Visual Alignment)と呼ぶ。好きな例と嫌いな例を並べて見せ、どこがどう違うかに印をつけ、そのやり取りごと好みのファイルに残す。これはDAY3で気になった「はい」ばかりの癖にも効く。断る材料が手元にあると、人は断れるようになる。「なんとなく違う」は言いにくくても、「こちらの余白のほうが好きです、理由はこれです」なら言える。NOと言えるようになって、はじめてAIは自分色に染まっていく。最後に、四回を通しての要点が一つにまとめられる。AIスタッフには一定の管理が必要である。AIスタッフが完成させた成果物の責任は、指示を出した私たちが負う。「AIが間違えました」は、お客様にもお取引先にも関係ない。だから便利かどうかを見る前に、しっかり管理できているかどうかを見てほしい。シンプルに言えば、AIスタッフを乗りこなす側になるべきで、乗られる側になってはいけない。三週間前、お二人はサイトの文字を一行直すために外に発注していた。今は、お二人でひとりのAIスタッフを共有し、二人目を採用する話をしている。増えたのは道具ではなく、任せ方と、管理の仕方だった。研修は終わるが、この会社がAIネイティブになっていく過程は、まだ始まったばかりである。シンプルにAIを。 いつもの仕事を、いつもの言葉で。
